「呪われた日常を、少年の意志がかき乱す。」
総合評価
4.08
ホラー要素を随所に散りばめながら、青年たちの友情や師弟関係を軸に据えたダークファンタジー。呪いとは何かという哲学的問いが同時に突きつけられ、パニック映画のようなスリルと人間ドラマの繊細さが混ざり合う。虎杖が背負う宿儺の存在は、作品全体に不穏な影を落とし、決して楽観的な着地点を許さない。それでもなお、各キャラクターが持つ絆や意地が死と破壊の只中でかすかな光を放つ。行き場のない呪いが世界を侵蝕していく一方で、読む者は希望を捨てきれないという矛盾が、この物語の鼓動を高めている。
ストーリー
4.0
呪術高専という教育機関を舞台に、学生らが呪霊に立ち向かう青春譚はベーシックに見えるが、呪霊側の思惑や呪術界の腐敗などが複雑に絡み合い一筋縄ではいかない。次々と死や破壊が積み重なり、希望らしい希望が見えづらいのに、不思議な中毒性がある。
キャラクター
4.2
虎杖や伏黒、釘崎といった若き呪術師たちの個性が濃厚で、五条悟の絶対的な強さと飄々とした性格が唯一無二の存在感を放つ。敵側にもユーモラスな会話が散りばめられ、安易な善悪二元論に陥らない。それぞれの抱える過去や闇が立体的に描かれ、物語を彩る。
呪いは人間の負の感情そのもの。理不尽で不条理な死や喪失がありながら、そこでもなお戦う意味を見いだそうとする姿勢が示唆的だ。しかし結論じみた救済はなく、矛盾を抱えたまま生きていく強さを描くあたりに、ダークな魅力と残酷な現実感が同居している。
オリジナリティ
4.1
日本的怪談のエッセンスとバトル漫画の熱量を掛け合わせ、呪術や領域展開といった独自システムを確立。ホラーとアクションを高速で行き来するため、既存のジャンル分けが難しい。呪術界の慣習や掟に一石を投じるストーリー展開にも新しさがある。
ビジュアル
4.3
呪霊の不気味な造形や、領域展開時の異空間描写が強烈なインパクトを与える。バトルシーンでは派手なエフェクトとスピード感が際立ち、血や内臓のグロ描写も躊躇しない。キャラクターの表情は硬派な筆致ながらも、感情の起伏がしっかりと伝わる。