ヲタクに恋は難しい

総合評価 4.02

ストーリー

4.0

キャラクター

4.2

メッセージ

3.9

オリジナリティ

4.1

ビジュアル

3.9

地味OLに見えるも実は重度の腐女子・成海は、転職先で幼なじみのガチゲーマー・宏嵩と再会する。お互いの“オタバレ”を気にしない同士ゆえに、付き合ってみれば気が楽かと思いきや、推しジャンルの違いにすれ違いや微妙な嫉妬も発生。加えて先輩カップルの小柳と樺倉も、コスプレ嗜好やツンデレ気質で日々盛り上がる。会社員として働きながら、隠しきれないオタク魂をどう扱うか。そんな四人の恋路は、オタ活とリアルが入り混じる摩訶不思議な色合いを帯びていく。

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漫画評論家 桜井橙子氏のレビュー

「秘めた趣味をさらけ出してこそ、大人の恋。」

総合評価

4.02

いやはや、オフィスラブにオタク趣味を盛り込むとは、ありそうでなかった異色の組み合わせではないか。恋愛はロマンか現実か、そんな議論を横目に、ゲームだ腐女子だコスプレだと、あれやこれやと趣味を爆発させながらも仕事もしっかりこなす彼らの姿は、どこか滑稽で愛らしい。作者の視線は終始あたたかく、それでいてオタクのこだわりを的確に抉り出す筆致が痛快だ。社会人同士の軽妙なやり取りの裏側には、「本当に心を許せる相手とはいかに?」というテーマが隠れていて、一歩踏み出せばオタク道がより楽しくなるという応援歌のようにも読める。まさに“ヲタクに恋は難しい”を地で行くドタバタ模様がくせになる一冊だ。

ストーリー

4.0

オフィスを舞台にした恋愛劇は、社内恋愛という王道ながらも、双方がアニメやゲーム、BL趣味を抱える“オタク”であるというスパイスが新鮮だ。通常の恋愛に加え、推しジャンルやイベント参加などオタクならではの障壁が入り混じることで、ドタバタぶりがより楽しめる。日常の中で静かに熱狂するオタク活動が、じわりじわりと恋愛の進展にも影響を与える構成が、読者の共感を誘う。

キャラクター

4.2

宏嵩のクールさとゲーム愛が突出する一方、成海の腐女子ゆえのオタク全開な言動との落差が絶妙な笑いを生む。さらに、小柳と樺倉という先輩カップルも、コスプレ嗜好やツンデレ気質で賑やかに彩りを加える。どの人物も“社会人”としての仮面と、“オタク”としての本音を巧みに使い分けており、その表裏こそが作中最大の魅力。変人だらけだが、そういう人々だからこそ愛おしい。

メッセージ

3.9

「趣味を理解し合うとは、己の恥部を晒すに等しい」という恋愛観が、作中で何度となく浮かび上がる。オタク文化を恥ずかしがらず、むしろお互いが受け入れてこそ関係が深まるというメッセージには、現代社会の価値観が反映されている。必ずしも大上段に構えるわけではなく、ギャグやラブコメの軽妙さを通じて、“受容と共感”の大切さを説いている点に好感が持てる。

オリジナリティ

4.1

職場恋愛×ヲタクという二要素を丁寧に絡めた時点で、なかなかの発明だ。恋愛漫画の定石を踏まえながらも、オタク同士の会話が斜め上に転がる展開には独特の味わいがある。単なるマニアックな業界漫画でもなく、しかし一般的なラブストーリーでもない。その絶妙なバランスによって新鮮さが際立ち、定番と奇抜さの中間を行くユニークな作品に仕上がっている。

ビジュアル

3.9

キャラクターの表情描写がコミカルで愛らしく、アッサリとした線が逆に会社員の生活感やオタクのノリを際立たせる。劇的なアクションやファンタジー要素こそ少ないが、デフォルメやギャグシーンのコマ割りが躍動感を生み出す。作画スタイルはややシンプル寄りだが、そのおかげで日常コメディのリズムが心地よく、読み手を飽きさせないところが長所といえよう。