チェンソーマン

総合評価 4.24

ストーリー

4.1

キャラクター

4.3

メッセージ

3.9

オリジナリティ

4.5

ビジュアル

4.4

悪魔が蔓延る世界。デンジは幼少期から相棒“ポチタ”と暮らし、生きるために闇の仕事に手を染めてきた。ある事件をきっかけにデンジはポチタと融合し、チェンソーの悪魔として復活を遂げる。公安デビルハンターとして悪魔を狩る一方、人としての安らぎや恋を欲するデンジの心は常に揺れ動く。血塗られた日常の中、彼は自分の生き方と死に方を問い続ける。

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漫画評論家 都築潤一氏のレビュー

「欲望と絶望が交差する、刃と血の悲喜劇。」

総合評価

4.24

血と臓器が飛び散るバイオレンスの中で、それでも登場人物たちは瞬間的な幸福を求めて手を伸ばす。作品全体を覆うのはブラックユーモアと悲壮感が混ざり合う独特の空気。デンジの純粋な願い(美味しい食べ物や異性との触れ合いなど)は、読者の想像を超えるカオスに巻き込まれ、そのたびごとに命の尊厳や欲望の在り方を鋭くえぐり出す。作中では「悪魔」という概念が人間の負の感情を体現するため、戦い自体が一種の内面との対峙でもあるように映る。ここには、救いのない夜を走り抜けるかのような危うさと、ほんの少しの温かさが同居している。

ストーリー

4.1

序盤から人と悪魔の契約という陰鬱な設定が提示され、何が起こるかわからないテンポの速さで進行する。章ごとに大きく空気が変わり、あっけなく死が訪れるなど予断を許さない。ライトな会話の中に突如として投げ込まれる暴力と狂気が、不可思議な引力を生み出し、読む者を放さない。

キャラクター

4.3

デンジの飢えた狼のような純粋さ、マキマの底知れぬ微笑、パワーの天真爛漫な凶暴性。主要人物それぞれに狂気とユーモアが宿っており、常識では測れない行動原理が読者を翻弄する。彼らの歪な欲望と不器用な優しさが、グロテスクな世界を妙に人間的に見せる。

メッセージ

3.9

生存や性愛のようなプリミティブな欲望が否定されることなく、むしろ救いとして描かれる。しかし結論めいたものは提示されず、理不尽な運命の中でどうしようもない死が積み重なるだけだ。だからこそ、現在進行形で足元を掬われるような、ざわつく問いが読後に残る。

オリジナリティ

4.5

チェンソーという凶器と人体が一体化したビジュアルが強烈。悪魔のデザインや名前づけのシュールさも独特で、奇想とグロが同時に走る。熱血主人公像を歪ませ、ブラックコメディ的に組み上げた世界観には、既存の少年漫画にはない異様な魅力が漲っている。

ビジュアル

4.4

臓腑が飛び散る圧巻のバトルシーンから、一瞬の静寂を湛えたコマ割りまで、視線誘導が巧みだ。細部は粗さを感じる時もあるが、むしろそのタッチが血の匂いや狂気をダイレクトに伝える。キャラクターの表情はときどき空虚で、それが不思議な寂寞感を醸し出す。