キングダム

総合評価 4.18

ストーリー

4.3

キャラクター

4.3

メッセージ

4.1

オリジナリティ

4.0

ビジュアル

4.2

舞台は春秋戦国の中国。下僕の身分から抜け出した少年・信は、天下の大将軍を目指すという壮大な夢を抱く。一方、秦国の若き王・嬴政も中華統一を掲げ、宮廷の権力争いや隣国との合戦に身を投じる。多くの武将や戦略家が入り乱れる中、信は無謀なまでの闘志で戦場を駆け、王もまた政治の荒波を乗り越えようと奮闘する。激烈な戦が繰り返される乱世で、ふたりの志は輝きを失わずにいられるのか。

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漫画評論家 都築潤一氏のレビュー

「乱世を駆け抜ける若き刃、その先に宿る中華統一の夢。」

総合評価

4.18

古代中国という広大なキャンバスに描かれるのは、血と汗が交じり合う戦塵のドラマだけではない。信という若者の青春と、嬴政という王の覇道が、交錯して強力な光を放っている。史実をベースにしながらも大胆に脚色された合戦シーンは圧倒的な迫力で、騎馬や歩兵が何万人も入り乱れる姿に圧倒される。だが同時に、各武将や兵士が胸に抱える小さな誇りや忠義が、戦場に鮮烈な人間味を与えている。決して単純な勝敗の話ではなく、一歩踏み出すことで未来を掴もうとするエネルギーが作品全体を貫く。大河ドラマの王道と少年漫画的疾走感の融合が、この「キングダム」の醍醐味だ。

ストーリー

4.3

信が一兵卒から成り上がる過程と、嬴政が国を掌握し大国を築くプロセスが同時進行で展開し、二人の物語が交わるたびに大きくうねりを生む。戦場の描写や謀略戦も多彩で、史実の要所要所を巧みにドラマへ結びつける手腕に引き込まれる。毎回の合戦がクライマックス級の迫力を備えているのが魅力。

キャラクター

4.3

信の一直線な性格が清々しく、嬴政の冷静なカリスマ性との対比が秀逸。王騎や蒙武といった将軍勢の豪胆さ、ライバル国に立ちはだかる英雄たちの活躍など、群像劇としての濃密さがある。主要キャラが死闘の果てに散るシーンも多く、そのたびに物語に熱い情感が漲る。

メッセージ

4.1

夢を追うとは血を流すことでもある。国を守るには多くの命が捨てられ、大義名分の裏で犠牲が出る。それでも志を持った者が、未来を作り出すために進まなくてはならない。そんな乱世の矛盾を描きつつ、どんな地獄のような場面でも希望を捨てない人間の力強さが浮かび上がる。

オリジナリティ

4.0

中国戦国時代を扱った作品は過去にもあるが、本作は少年漫画らしい成り上がり要素と大量のキャラクターを活用し、壮大なドラマを高密度で描く。史実との合わせ技や合戦のスケール感が売りだが、驚きの仕掛けというより、丁寧な成長譚でオリジナリティを発揮する印象がある。

ビジュアル

4.2

戦場の大場面では無数の兵士や馬が入り乱れるダイナミックな画面が圧巻。武将同士の一騎打ちも身体の動きが重厚に描かれ、迫力に満ちている。精緻というより勢いを重視した線で、大軍勢の迫力と人物の感情を同時に表現する手法が効果的だ。