「年齢も怪獣も、越えてみせる意地があるんだ。」
総合評価
4.04
怪獣という究極の脅威と、それを倒す防衛隊という図式。その裏でカフカの中年感が醸し出す人間臭さが、物語を絶妙に彩っている。若手中心の世界でこそ、彼の地味で不器用な夢が一層鮮明に映り、読む者は「まだやれる」という希望を託したくなる。人にバレてはならない怪獣化能力という禁忌が、大人の世界の窮屈さと密かにリンクしているようでもある。コメディタッチの軽妙な会話や組織内のドラマと、大胆な怪獣バトルシーンがめまぐるしく切り替わる構成はテンポが良く、いつの間にか先の展開に惹き込まれる。大げさではないが、誰かを守るために踏み出す一歩に、人間の素朴な誇りが宿っている。
ストーリー
4.0
すでに怪獣災害が日常化している日本を舞台に、中年男の再挑戦という王道サクセス要素が絡む。怪獣化能力を得たことを隠しながら、防衛隊の試験と実戦に臨む設定がスリリングだ。過去の未練を振り払って進む主人公像はシンプルだが、そのぶん読後感にストレートな爽快さがある。
キャラクター
4.1
カフカのどこか諦め混じりの性格に、幼馴染のミナや若手隊員らの情熱がうまく刺激を与える。さらに怪獣化という極端な異能が彼の苦労と相まってコミカルな化学反応を生む。防衛隊上層部や謎の怪獣組織の動きなども含め、脇役たちが抱える想いがドラマを厚くしている。
夢に年齢制限はあるのか。カフカが実感するのは、大人の現実が思いのほか厳しいことだ。しかし、それでも前に進みたい意志を失わない。作品全体に漂うのは、誰もが心の奥底に持つ「もう遅いかもしれないが、諦めたくない」という素直な感情へのエールだ。
オリジナリティ
4.2
怪獣の死骸処理員が怪獣になり、防衛隊を目指すという逆説的な状況がユニーク。従来の怪獣漫画なら巨大生物との戦いが主軸だが、本作は主人公自身がその境界に立つ。コメディとシリアスを絶妙に行き来するリズムも、他の怪獣モノとは異なる軽快さを生んでいる。
ビジュアル
4.0
怪獣の大きさや形状が多彩で、破壊描写にも迫力がある。カフカが変身した怪獣形態は筋肉の隆起や表情が生々しく、異形とヒーローの中間地点を匂わせる。背景や戦闘シーンはやや情報量が多いが、勢い重視の見せ方で読者を飽きさせない。