花野井くんと恋の病

総合評価 4.00

ストーリー

4.0

キャラクター

4.0

メッセージ

3.9

オリジナリティ

3.8

ビジュアル

4.1

恋愛に疎い女子高生・ほたるは、ある日、学校の中庭で偶然助けられたことをきっかけに、同級生の花野井くんから猛烈アプローチを受ける。彼の感情表現はまっすぐ過ぎて、時に不安と戸惑いを覚えるほど。しかし、まるで恋を学習するかのように愛情を注ぐ花野井くんの姿は、ほたるの心を次第に動かしていく。ふたりのぎこちない関係は、ときに衝突を招きながらも、少しずつ“本当の想い”を知る旅へと向かう。果たしてそれは純粋な恋か、それとも危うい執着か――。互いの孤独と希望が交錯する青春ラブストーリーである。

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漫画評論家 桜井橙子氏のレビュー

「純愛か束縛か? 一途すぎる想いに戸惑う青春」

総合評価

4.00

恋愛に疎い女子高生・ほたるは、ある日、学校の中庭で偶然助けられたことをきっかけに、同級生の花野井くんから猛烈アプローチを受ける。彼の感情表現はまっすぐ過ぎて、時に不安と戸惑いを覚えるほど。しかし、まるで恋を学習するかのように愛情を注ぐ花野井くんの姿は、ほたるの心を次第に動かしていく。ふたりのぎこちない関係は、ときに衝突を招きながらも、少しずつ“本当の想い”を知る旅へと向かう。果たしてそれは純粋な恋か、それとも危うい執着か――。互いの孤独と希望が交錯する青春ラブストーリーである。

ストーリー

4.0

花野井くんの激しい感情表現と、まだ恋を実感しきれていないほたるの繊細な心が、互いを補完するかのように少しずつ交わっていく筋立てが秀逸。時に危険とも思えるシーンを挟みながらも、前向きに変わろうとする意志が背後に流れており、ページをめくる手を止めさせないスリリングさと温かな余韻を同時に生む。二人が互いの気持ちを知ろうとする度に、新たな局面が立ち現れ、恋愛の複雑さを浮き彫りにしている。

キャラクター

4.2

一見クールな花野井くんは、想いが高まると途端に独占欲をむき出しにする極端さが強烈な魅力となり、天然かつ好奇心旺盛なほたるとの掛け合いが絶妙。彼らを取り巻く友人や家族の存在も、いずれも一筋縄ではいかない個性を放っており、恋愛だけにとどまらない人間模様を広げている。キャラクター同士の化学反応が作品世界を立体化し、物語への没入感をより高めている点も見逃せない。

メッセージ

3.9

本作に漂うのは、純粋な恋心と、それが行き過ぎることで生じるリスキーな側面との紙一重の緊張感である。相手を大切に思う気持ちは美しいが、同時に行き過ぎれば暴走ともなりうるという現実が描かれることで、読者は“愛とは何か”を否応なしに考えさせられる。そうした視点から、人を思うことの温かさと怖さを兼ね備えた恋愛の二面性を、真摯に見つめる姿勢が感じられるのだ。

オリジナリティ

3.8

「過剰なまでに相手を想う少年」と「初めての恋に戸惑う少女」という組み合わせ自体は、王道ラブストーリーの延長線にある。しかし本作は、その危うい境界をじっくりと描写する筆致の丁寧さが光る。独占欲や依存心を安易に美化せず、等身大の高校生の葛藤としてリアルに描いている点が新鮮だ。とはいえ大枠としてはベタな恋愛漫画の枠を出ていないため、評価はやや抑えめとした。

ビジュアル

4.1

可愛らしく柔らかいタッチのキャラクター造形が目を引く一方、花野井くんの瞳や表情に宿る狂気や熱量は、ページをめくるごとにじわじわ迫ってくる。ほたるの繊細な心情変化も、コマ割りと線の抑揚によって巧みに可視化され、ふたりの心の距離の変化がリアルに伝わる。背景や小物のディテールも丁寧で、学園ラブストーリーの舞台をより鮮明に演出する演画力が印象的だ。