鋼の錬金術師

総合評価 4.38

ストーリー

4.5

キャラクター

4.4

メッセージ

4.3

オリジナリティ

4.4

ビジュアル

4.3

錬金術が盛んな国。エドワードと弟アルフォンスは、亡き母を生き返らせようとした禁忌の代償で身体の一部と魂を失った。失われたものを取り戻すため、国家錬金術師として旅に出るエドは、各地で出会う人々の思惑や陰謀に巻き込まれながら、“賢者の石”を求める。ホムンクルスと名乗る謎の存在、人種差別が孕む歴史の闇、そして錬金術そのものが抱える罪。兄弟は多くの苦難を経て、真理と向き合うことになる。

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漫画評論家 都築潤一氏のレビュー

「等価交換の理を背負い、兄弟は真理の扉を叩く。」

総合評価

4.38

錬金術という科学と魔法の中間に位置する力が、壮大な物語を形作っている。エドとアルが背負った失敗は、等価交換の掟を身をもって証明するようで、その償いの旅が作品の根幹を成す。だが世界には国家規模の陰謀やホムンクルスの暗躍、さらに人間の差別意識や戦争の傷跡があふれ、単なる冒険ファンタジーを超えた社会的テーマを孕むのが特徴的だ。科学の発展は人間を幸福にするのか、それともさらに深い業へ導くのか。エドたちの選択と成長が織り成す物語は、ラストに向けて幾重にも張りめぐらされた伏線を回収し、強いカタルシスをもたらす。

ストーリー

4.5

兄弟の過ちから始まる物語が、国を揺るがす巨大な陰謀と繋がっていく流れは見事な構成力。道中で起こるさまざまな事件が、最終的に一つの結末へ収斂する過程が快感を伴う。錬金術の法則が要所要所のドラマに活き、兄弟の成長も自然に進んでいくため、長編ながら物語の輪郭が崩れない。

キャラクター

4.4

エドとアルの兄弟愛に加え、焔の錬金術師マスタングやウィンリィ、ホムンクルスらが多層的に絡み合う。各人が抱える信念やトラウマが鮮明で、敵であっても単純に憎めない背景を持つ場合が多い。脇役の軍人たちにも存在感があり、群像劇としての奥行きを形成している。

メッセージ

4.3

「等価交換」の原則が示唆するのは、何かを得るためには必ず何かを失うという真理だ。しかし同時に、人間の絆や努力によって生まれる価値は、一概に数値化できるものではない。過ちを犯してもそれを取り戻す意志こそが、最終的に人間の尊厳を支えるのだと作品は語りかける。

オリジナリティ

4.4

錬金術を中心に据えた架空世界は、産業革命期のような雰囲気と魔法ファンタジーの中間を巧みに表現する。科学と宗教の葛藤、異民族間の軋轢などリアルな社会問題を織り交ぜつつも、少年漫画的冒険の面白さを損なわないバランスが評価に値する。

ビジュアル

4.3

機械鎧や錬成陣の描写はメカニカルな魅力があり、バトルシーンでは錬金術の光やエフェクトが映える。背景や衣装デザインも丁寧で、どこか異国情緒を感じさせる。シリアスシーンとギャグシーンの切り替えを表情やトーンで巧みに演出し、メリハリの効いた読み味になっている。