「オカルトと宇宙が交わる境界で、青春は踊り出す。」
総合評価
4.06
幽霊や妖怪、宇宙人といった要素をひとつの物語に詰め込むと通常は混沌に陥りがちだが、本作はその混沌をむしろ加速剤にしてしまう。学園青春の軽妙さと、不条理なオカルト現象が絶妙に噛み合い、一種のセッションのように弾けるテンポを生む。少年と少女の会話はどこか突飛で、しかしその中にきらめくようなリアルな感情が見え隠れする。次々と登場する不可解なキャラクターや状況が、読者の常識を揺さぶりつつ、笑いと恐怖を同時に呼び起こす。ジャンルの枠に囚われない、ポップでアナーキーな空気が一貫して流れているのが魅力だ。
ストーリー
3.9
学園ラブコメの定石かと思いきや、幽霊や宇宙人が日常的に現れるため、予測不能な事件が次から次へと押し寄せる。筋道というより瞬発力重視の展開で、読者をいい意味で振り回す。シリアスなホラーとギャグが矛盾なく混在し、ストーリーの常識的な枠組みを越えて突き進む。
キャラクター
4.1
少女と少年の微妙な距離感が可笑しくもあり、そこに加わる友人や怪異たちがさらなる混乱を招く。一人ひとりが個性的で、オカルトへ抵抗なく首を突っ込む姿が微笑ましくもエキセントリック。脇キャラを含め、変人率が高めなところが独特の味を深めている。
オカルトや宇宙人を信じるかどうか、そんな些細な対立がむしろ「他者をどう受け入れるか」という大きなテーマに通じる。怪異と遭遇しても彼らはパニックになりつつも仲間を助け合うし、否定的だった概念を少しずつ受け入れていく。ゆるやかな共存の空気が漂っている。
オリジナリティ
4.3
幽霊と宇宙人という別系統の超常要素を一つの漫画で堂々と融合する挑戦はなかなか見ない。ホラー、ギャグ、青春の混在により、翻弄される感覚が心地よいカオスを生む。意表を突く怪異の演出やレトロなSF要素の扱いも新鮮で、カテゴライズ不能な魅力がある。
ビジュアル
4.2
怪異のビジュアルが多種多様で、ホラー映画的な不気味さとギャグ調のデフォルメを巧みに行き来する。キャラクターのリアクションも大きく、驚きや恐怖が素直に伝わる描写が楽しい。背景や小物に小ネタを潜ませるような遊び心があり、画面の隅々まで楽しめる。