「無個性の少年が、英雄の定義を塗り替える。」
総合評価
4.18
「無個性」という欠落を抱えた主人公が、逆に最強の才能を得るという捻りが、本作を象徴している。アメコミ的な世界観と日本の学園ものが絶妙に融合し、友情や努力といった古典的モチーフに新鮮な息吹を与える。出久が努力を重ねる先には、社会を脅かす深い闇や、ヒーローの偽善性を問いかける展開も潜んでいて、一筋縄ではいかない味わいがある。生徒たちが互いの個性をぶつけ合い、成長していく様子は爽快でありつつ、物語後半ではヒーローとは何かという根源に踏み込む。単なるパワーアップの繰り返しに留まらず、倫理や責任についても真剣に投げかける姿勢が印象深い。
ストーリー
4.0
ヒーロー養成校に通う生徒たちの成長を軸に、学内試験や文化祭など青春要素と、ヴィランとの壮絶な衝突が同時進行。明るい学園ドラマと重厚な社会問題の連動がスピーディに描かれ、読者に飽きを感じさせない。大きな謎や陰謀を少しずつ明かしていくテンポが程よい。
キャラクター
4.3
緑谷出久の不器用な優しさに対して、爆豪勝己の激しい競争心、轟焦凍の抱える家庭事情など、クラスメイトそれぞれが濃密なドラマを持つ。オールマイトやエンデヴァーなど先輩ヒーローの存在も大きく、彼らの名誉や苦悩が物語に説得力をもたらしている。
ヒーローが公的な職業として認知される世界で、人を救うことの意味は必ずしも美しく純粋ではない。メディア戦略や政治的駆け引きも絡む中、主人公たちは「本当の正義とは?」を問われる。弱者を救う行為の尊さが、仲間との絆と対比されながら浮き彫りになる。
オリジナリティ
4.1
アメコミの超人社会を下地にしながら、日本の学園青春譚に落とし込んだ発想は新鮮。個性の多様性によって組み合わせが無限大に広がり、バトルシーンや日常生活にユニークなバリエーションが生まれる。王道的要素をしっかり残しつつ、新しい見せ方を模索している。
ビジュアル
4.2
キャラクターのコスチュームデザインがカラフルで魅力的。バトルでは個性の派手なエフェクトが目を引き、コマ割りの工夫で動きを大きく演出。感情が高まるシーンにおける背景処理やラインの力強さが、決定的な瞬間をよりドラマチックに盛り上げる。