「疾風をまとう赫き勇者たち、緑の大地を駆け抜ける。」
総合評価
4.16
アメフトという日本では少し異国めいた競技を舞台に、気弱な少年が疾風となってグラウンドを疾走する姿は、川辺を駆ける爽やかな風を思わせる。弱々しい外見に反して、瀬那の脚力が物語を突き動かし、泥門デビルバッツの仲間たちと共鳴しながら成長していく様子が心地よい。蛭魔の狡猾な発想が試合に奇妙なユーモアとスリルをもたらし、各校のユニークな選手たちが試合を鮮烈に彩る。合宿や公式戦のたびに、まるで春先の山道を歩むような息苦しさと、頂上に達したときの爽快感が交互に訪れる。読み終わるころには、緑の大地を一陣の疾風が駆け抜けた後の静けさに、穏やかな余韻が残るだろう。
ストーリー
4.1
小さな少年がアメフトという大舞台で走力を武器に戦う展開は王道の成長物語だが、競技の特殊性や試合運びが新鮮さを生む。合宿や試合による課題やライバル登場などが盛りだくさんで、瀬那が自分の足で道を切り開いていく過程が丁寧に描かれている。
キャラクター
4.3
気弱な瀬那と、破天荒な蛭魔の対比が際立つ。さらには個性的な泥門デビルバッツのメンバーや、強豪校のライバルたちも鮮明に色を放つ。少しずつ友情と信頼を築く青春群像は、試合の緊張感と相まって読者をより深く物語の中へ誘う。
自分の弱さから逃げず、仲間と共に挑戦を続ける姿勢が物語の核となる。練習を重ね、失敗を経て再び立ち上がる瀬那の姿は、「一歩踏み出す勇気」があれば世界は変わると教えてくれる。スポーツを介して仲間と共有する汗と涙が、何よりもかけがえのない宝物だ。
オリジナリティ
4.1
日本で馴染みの薄いアメフトを少年漫画に落とし込み、スピード感と戦略性をわかりやすく演出している。競技のルール説明を物語に自然に組み込みながら、キャラクターごとの必殺技めいたプレーが加えられ、エンタメ性を一層高めている。
ビジュアル
4.3
村田雄介の筆致はダイナミックかつ繊細。防具をつけた選手同士のぶつかり合いは迫力にあふれ、瀬那の疾走シーンは切り取られた風のような爽快さがある。筋肉や装備の質感が丹念に描かれ、試合時の視線誘導も的確で、読者は一瞬たりとも目が離せない。